遺言書の保管制度とは?
聞きなれない言葉かもしれませんが、令和2年の7月にあたらしく始まった制度で、『自筆証書遺言書保管制度』というものがあります。
『自筆証書遺言(書)』とは手書きで書いた遺言書のことで、その遺言書を法務局で保管するという制度が『自筆証書遺言書保管制度』です。
これを利用すれば、遺言書を隠されたり改ざんされることが防止でき、遺言書があることの把握が簡単になります。
何だか便利そうなものが
できたね!
どんな制度なのか、
くわしく見ていきましょう。
①この制度を使えるのは、どんな人?
遺言は『15歳以上』で『遺言を行える能力』をもつ人ができるとされていますので、これに当てはまる人ならば、まず『自筆証書遺言』を書けると言えるでしょう。
また、この制度の申請は『遺言をするご本人』がすることとされています。
②申請にかかる費用はいくら?
保管の申請にかかる手数料は3900円とされています。
他に、専門家に自筆証書遺言の原案をつくってもらったり、チェックをしてもらうなどする場合は、その費用が必要です。
ご自分で遺言書を書くならば、かかる費用は申請手数料だけです。
③どうやったら利用できる?
準備した自筆証書遺言を、管轄の法務局に持っていきます。
先ほど記述したように、遺言をしたご本人が法務局に出向く必要があります。
必要書類として、申請書、住民票等、顔写真つきの本人確認書類と、申請手数料として3900円が必要です。
メリット
- 法務局に保管された遺言書について、検認は不要です。
亡くなった方の遺言書が『自筆証書遺言』だった場合、その遺言書を見つけたときに開封してはいけないことを知っていますか?
自筆証書遺言は、改ざんされていないことを証明するために、家庭裁判所で『検認』という作業を行わなければなりません。
一方、『自筆証書遺言書保管制度』を利用して法務局に保管された遺言書については、改ざんされたり紛失したりのおそれがないので、検認をする必要がないのです。
- 遺言書が保管されていることを通知してもらえます。
法務局に遺言書の保管を依頼する際に、『遺言者が亡くなった場合、1名に対し遺言書を保管していることを通知』してもらうことができます。
遺言書保管官は、遺言者が亡くなったことを確認できたときに、指定された方に対し遺言書が保管されている旨の通知をするとされています。
デメリット
- 自ら出向いて申請する必要があります。
遺言者は、自ら法務局に出向いて保管の申請をしなければなりません。
施設に入っていたり足腰が悪かったりして外出ができない方は、残念ながらこの制度を利用できないことになります。
ちなみに、『公正証書遺言』ならば、公証人に遺言者のもとに出張してもらい遺言書をつくることができますが、反対に保管制度は利用できません。
- 遺言能力の確認はしてもらえません。
法務局では、申請者が遺言能力を有しているか、認知症ではないかなどの確認はしません。
認知症について疑われる場面が予想されるならば、病院で『認知症ではない』旨の診断書をもらうなどの対策が必要となるでしょう。
また、公正証書遺言であれば、公証人が作成にあたって遺言能力の有無の確認をしますので、遺言能力について不安があるならば、公正証書遺言をおすすめします。
- 内容のチェックはしてもらえません。
法務局の遺言書保管官は、遺言書に書かれたことが『法律的に有効』かどうかのチェックはしません。
遺言書の形式にあてはまっているかのチェックをするだけです。
したがって、いざ『遺言書のとおりに執行するぞ!』という段階になって、名義変更や預金の払い出しができないかもしれないという危険性があります。
また、遺言書には配偶者居住権、特別受益の持ち戻し免除、遺留分侵害額請求など、いくつかルールがありますので、不安がある方は専門家に相談すると良いと思います。
- 遺言情報証明書の交付が必要です。
保管された遺言書では、遺言執行をする場合に『遺言書情報証明書』の交付を請求しなくてはなりません。
この『遺言書情報証明書』の交付を請求するには、亡くなった方の出生時からの戸籍、全ての相続人の戸籍や住所を証明するもの等の書類が必要となります。
まとめ
遺言書の保管制度は、検認が不要なうえ、相続人に遺言書があることを通知もしてもらえるので便利なことがわかりました。
ただし、遺言書の内容などを詳しく見てもらえるわけではなく、
遺言を執行するときには『遺言書情報証明書』を交付してもらわなければならなかったりと、注意しなければならない側面もあります。
遺言書を書くうえでは、いくつかルールがあるので、専門家に相談することをおすすめします。
ねこのて行政書士事務所では、『遺言書の保管サービス』を承りますので、ご利用の方はぜひご相談ください。
- 最初の1年間は無料で遺言書を保管いたします。
- 2年目以降は、ご希望の方についての遺言書を保管いたします。
- 期間満了の3ヵ月前までに、内容の変更や状況にお変わりがないか確認の連絡をさせていただきます。